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現代の砲術師   5月14日

 火縄銃、ただの古鉄砲だと云えばそれまでだが、どれもこれも江戸時代の本物だ。若い物でも200年は経っている。二度と作れない骨董品ゆえに大事にし後世に伝えてゆかなければならない。 但し砲術師が使う火縄銃は実際に使う道具である。文化庁に係わる各県教育委員会に登録された骨董品或いは美術品の古式銃と言えども、機能が完全であり安全に使用できるものでなければならない。嬉しいことにきちんと整備されたものは今でも充分に使える。そこが凄いところである。でなれば使えるはずもない。
 現代の砲術師が手にする火縄銃はあくまでも実用道具である。とはいえ物騒な目的に使用しようとする物ではもちろん無い。また鑑賞を目的のものでもない。世には後に象眼を施して美術品めいた代物が数多くでているが、それは博物館か美術館の所蔵品で終わることになる。私たちの手には渡らない。
 なぜなら実際に使用できなければ火縄銃ではないと仲間はみな思っているからだ。火縄銃は良くできた単なる工芸品ではなく、製作当時の最新工業技術の成果がそこに反映されている実用道具であるということを私たち仲間はみな知っているからだ。
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 世界が、日本に素晴らしい技術と文化が残っていると高く評価するこの火縄銃が、世に出現してそして消えていったその間の興亡が、日本の歴史の中に無視できない大きな存在として刻み込まれ、また明治以降、その精緻なる技術が近代工業発展への礎になったことを、日本人たるものあらためて再認識したいものだ。これは乱射事件の銃とは別世界の話しである。
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 話変わって今度は撃ち手の話し。画像は何れも150匁大筒を膝台で構える現代の知る人ぞ知る名砲術師の一シーンである。フォームが素晴らしい。
 150匁とは現代で云えば563g、その重さの鉛玉を発射する大型の火縄銃のこと。口径は46mm、重量は25kgほどもある。膝の上とはいえ抱えるだけでも容易ではない。
 この大きさ、西洋人なら砲車に載せて馬で引っ張り回す。現代ならば戦車に付いている大砲と言った方が分かりやすい。日本人はこんなものをその膂力で使いこなしたのである。
 これを撃てるのは日本でも何人もいない。ボクも一度だけ経験があるが、もう一度と言われてもそう簡単にハイとは言い難い。それなりの覚悟が必要である。もしかしたらその強烈な反動で身が一回転するかも知れないから。恐ろしや恐ろしや・・・・・である。

by natsuman | 2007-05-14 18:07 | Trackback | Comments(2)  

Commented by あい at 2007-05-14 22:09 x
上の写真と下の写真、フォームがずい分違いますねえ。水平撃ちの方が美しいのは無理がないからかなあ。
Commented by natsuman at 2007-05-16 21:23
そうですね。撃つ前と撃った後の違いですが、巧拙もあります。経験の違いでしょうね。

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