遥か昔、千曲川は今の川面より数十mもの高所を流れていたという。
今では中々信じがたい。
ここ岩鼻という地区。
両岸に山が迫っていて広い上田平から千曲川が流れ出す地峡である。
千曲川の激しい流れが山を割り、削り、広い川原となった。
また堅い岩山には巨大な穴を穿った。
穴は二つある。 国道18号から見ると人間の鼻を下から見ているようである。
正に鼻の穴だ。片方は落石で埋まっているらしい。
でも遠目にはやはり鼻の穴。
以前、鍋屋嘉兵衛の道中記を読み解いたことがある。
姨捨から上田宿へ出る途中、まるで「鼻の穴の如し」と笑い記したのがここのこと。
下の画像はその岩山の穴の下、横から撮っている。
この断崖の高さが侵食した川の凄さを物語る。
この岩山の上を昔の千曲川が流れていたとはちょっと信じがたい。
さて話変わる。
この先で何となしに秋の河原を眺めていた。
と突然、何やら黒い疾走する集団が目に入った。
はじめはカモシカかと思った。
いやカモシカがこんな所にいるわけがない。
でもそのくらい黒々と見えた。
見事な角を見て、ああこれは野生の鹿と悟った。
距離にして200mか。遠くてはっきりしない。
それに生き物の体色はみな保護色だ。
河原の石や流れ着いた枯れ木やらバックに紛れて判然としない。
ただ黒っぽい塊が猛スピードで河原を一直線に駆け抜けていく。
慣れない人なら動物とさへ気づかないだろう。
でも元狩猟人としては、目はしっかり「ハンターの目」。
あれは日本鹿。大きな角の体格のいいブルが数頭もいた。
黒い塊が次々と疾駆する様はまるで草原を行くバッファローのよう。
20数頭、いやもっといたか。一瞬我が目を疑う。
手にしたスマホを向ける余裕もない。
するとしばらくしてまたもや動くものが。
中州にいたの数頭がザンブとばかり激流に飛び込み川を渡っている。
激しい水流に押し流され水しぶきが舞う。
向こう岸に上がり、あっという間に河原を走り去った。
映画のシーンのようだった。
ここは上田市の郊外。だが国道もすぐそばを通っている。
なのに野生の王国もかくやとばかりに少々驚いた。
そういえば今日は狩猟解禁日だった。
(修正)
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