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船員教育は二本立て

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海鷹丸は大学が持つ練習船として日本一大きい、と昨日書いた。
と云うと、もっと大きな帆船や練習船があるではないかと思われるお方もあるだろう。

実は、帆船である日本丸や海王丸の外に、汽船の(正しくは動力船の)練習船がある。
大成丸や青雲丸、銀河丸で、これらも館山湾には良くやってくる。
だが、これら帆船も動力船も、みな旧航海訓練所に所属している。
大学が直接、船の維持管理や運航をしているわけではない。
ところが海鷹丸は元東京水産大学だった現東京海洋大学が所管する船だ。
そういう意味で大学が持つ練習船として日本一である。

船の運航や維持管理は容易ではない。学校は教育に専念したい。
そこで厄介な練習船の運行管理部門を学校から引き離した。
今は海技教育機構とか何とか、名称が代わったが、元は運輸省航海訓練所と云った。

船員教育は古くは旧運輸省の所管事項。商船高校や商船大学、海技大学院等がある。
それら学生の海上実地訓練を、海技教育機構が受け持っている。
(ああややこしい。そのもずばり航海訓練所と云った方が分かりいいのに)
というわけで、沿岸用の小さな船は別として学校は大きな練習船を持っていない。
必要がないからである。

一方、漁業はかって農林省所管だった。今は水産教育のための大学や高校がある。
しかし、こちらは旧運輸省のような船舶管理別立ての考えを持たなかった。
それでは学校が直接練習船を持たざるを得ない。
そこで水産部門を抱える大学は国に、水産高校は都道府県に支えられて、
学校が練習船を直接運行管理しているというわけ。

日本は明治以来、海運を振興してきた。それには商船員が必要である。
それも一丁前の船長や航海士を育てるために専門教育を盛んに行った。
後の商船大学や商船高校である。
一方、漁業振興の一環として漁船船長や航海士の教育も全国的に進められた。
こちらは水産学校である。

こうした商船教育は旧運輸省、水産教育は旧農林省の所管という、
旧来の習慣を今も引き継いでいる。
とはいえ船長や航海士を育てるのに商船も水産もない。
どちらも海技技術者を育てるためだ。その教育内容に大きな違いはない。
水産学校から商船に乗る人もいる。商船学校を出て漁船に乗る人もいる。
もちろんそれ相応の海技資格に応じてだが。
結局、商船学校が上級の、水産学校はその一部、下辺を支えていることになる。

商船と漁船とでは船の大きさが違う。また船の運用目的も異なる。
しかし、海上という環境下で求められる技術や知識、必要な経験に大きな違いはない。
そもそもが海が舞台である。
船の安全管理を図る海事技術者としての資格はどちらも同じ。
海上衝突予防法をはじめ国際的に課せられるルールに違いはない。
どちらも同じ海員教育に変わりはない。
日本では海事技術者教育は二本立てなのだ。
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by natsuman | 2017-10-10 13:12 | 艦船舟艇 | Trackback | Comments(0)  

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