船とは人が乗る乗り物。である以上、人命の安全確保が不可欠だ。もちろん転覆、浸水、漂流、火事になったりしては乗り物にならない。
そうならないよう建造し、また運航しなければならず、
ために必要な設備が法律で定められている。
なんでまたそんなことをと思われるかもしれない。
なあに、この間の海王丸を日本丸と間違えたことの続きである。
船舶は国内的にも国際的にも船体の構造や設備を整え、
また必要な資格を有する船員を乗り込ませろと法律で定めている。
では一般旅客も乗る客船はどうなるか。
貨物船なら専門の船員が乗る。漁船は漁船員という特殊な人が乗る。
ところが旅客船は船員以外に旅客が乗る。
船員はそれなりに教育を受けている専門家。だが旅客は海については素人。
旅客が乗っていてはいざというときお荷物になりかねない。
そこで旅客船は設備や安全への規定が一段と厳しい。当然である。
ということを言い換えれば、
客船以外は素人は乗らないという前提で船が造られている。
帆船日本丸は商船教育の練習船として国の予算で建造した。
ところが従来は船員の教育訓練にのみ使用する、
つまり乗るのは練習生だけと想定してきた。
もちろん練習生は列記とした船員の卵。素人のお客さんではない。
ところが「青少年のための海洋教室や体験航海」にも利用したいと意識が変わった。
かくして新しい練習帆船”海王丸”が誕生する。
日本丸はお客を乗せない。が海王丸は一般の青少年をも対象に乗せる。
そこで旅客船として建造。見た目には同じようでもここが違う。
皆さんも希望すれば旅客として練習船に乗り訓練を受けられる。
但しベッド数は22名分しかない。申し込みはお早めに!(笑)
両船はよく似ている。中々見分けにくい。
そこで、やれ船首像が違う。船側のブルーのラインの数が違う。
後部操舵所の、後からの波浪を防ぐシェルターの形が違うなと色々取りざたされた。
だが、どれも遠方からでは見分けにくい。
ところが旅客船とそうでない船とでは救命設備が違った。
旅客船はお客さんファースト。旅客船の方が設備規程が厳しい。
結果、救命艇の色が異なった。
細かくは色々あるが遠目にも分かるのは救命艇の色。
日本丸はオレンジ色。海王丸は白色。
沖合に停泊している練習帆船の優雅な姿の中に、
もしもオレンジ色が見えたらそれは日本丸。
海王丸は旅客船らしく白色である。
要は「国際航海に従事する旅客船」として誕生したか否かが、
救命艇の色に現れたというわけ。