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絶好の錨泊地 6/6

絶好の錨泊地 6/6_d0013739_1195523.jpg 館山湾は三方を陸地に囲まれた大きからず小さからずの湾だ。東京湾口部に所在する貴重な避泊地でもある。
 船は岩壁やブイに繋船しない限り錨泊することになる。船は水に浮いていて、その水は海洋では必ず流れがあり船は流されて一点には留まりにくい。また海上には風もある。車と違ってブレーキはなし、水に乗り風に押され留まることの出来ない物体である。
 渡し船に乗ったある男がうっかりして物を水中に落とした。あわててここだここだと船縁に印をつけたという話がある。その行為を嗤うのはこのような理由による。
 海上で一点に船を止めることが如何に難しいか。船から深海底にドリルで穴を掘るなんてことが技術的にどれほどの困難か、海底資源開発の話を目にする度に思う。
 船が誕生してから人類は錨を考案する。古来何千年という歴史の中でその利用は今も変わらない。
 さて流れようとする船を止めるのは錨がと思われがちだが、実はそれ以上に、錨綱や錨鎖つまりロープやチェーンの長サが重要である。少なくとも水深の5倍以上も繰り出すことと、運用術の教本にはある。基礎中の基礎だが・・・・。
 何を言いたいか。館山湾の場合、錨泊適地は概ね水深20mから60m位はある。水深30mとしてもその5倍は150m。実用的にはもっと錨鎖を繰り出すから200mはあるだろう。もし風向きが変われば錨を中心にして径400mの円内を船はふれ回ることになる。錨を入れた場所の水深が深ければさらに範囲は広がる。
 つまり錨泊には広い場所が必要ということ。館山湾の広さはその条件を備えてる。かっては旧海軍の艦隊がごそっと碇泊できたのもそれが理由だ。
 船舶が必ず備える「水路書誌」にも、館山湾は避泊地として最適で錨掻きも宜しいとある。但し西風の際は適当でないとも。
 広すぎて天然の良港とは云いにくいが、南と北に天然の防波堤のような岬が突き出て湾を構成、夏は確かに鏡のように静かな海だ。別名鏡ヶ浦とも呼ばれる。冬の西風以外は穏やか様相を見せる館山湾は関東一の絶好の錨泊地である。
 なお館山湾には実に多くの種類の船がやってくる。自衛艦・外国軍艦・巡視船艇・商船・貨物船・工事船・大型漁船・各種練習船・調査船、そして花形のクルーズ客船等々。
 中でも毎年この時期に姿を現す航海訓練所の練習帆船「日本丸」や「海王丸」、また汽船練習船の「大成丸」「銀河丸」「青雲丸」などは市民人気の的だ。市役所にはそれらの予定表が掲げられている。 

by natsuman | 2013-06-06 11:06 | ふねの舘 | Trackback | Comments(0)  

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