修復成る 5/2

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 江戸の職人の向こうを張ってこつこつと始めた大筒の部品修復。雨被いとクサビをとりあえず完成させた。
 まず筒の側を用意。時代物の鉄砲は鉄質そのものが柔らかい。クサビを入れ込む2mm程の細い溝をタガネで慎重に彫り込んだ。この溝がないとクサビが外れる。そうなれば今度は雨覆いそのものを無くすことになる。この筒はなぜかその溝が完全でなかった。それが部品を無くした原因である。
 筒の火皿の後部には金ノコで挽き割ったような細い溝がある。そこへ雨被いの鍔を差し込み、さらにクサビを打ち込んで雨被いが外側へずれないように固定する。
 今なら部品をビスで留めるという方法をとるだろう。だがそのような細工は火縄銃にはない。ネジを応用したのは尾栓だけである。
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 鉄砲とは一口に言えば一端を塞いだ鉄筒で基本構造は限りなく簡単。だがその塞ぎ方は簡単ではない。弾丸を押し出す際の火薬の高圧な燃焼ガスに耐えなければならない。かしめではなく、閂でもなく、沸かし付けでもなく、しかも開閉が出来なければならない。結局ネジを応用するしかない。
 筒の後端に雌ネジを切り、雄ネジを切った尾栓をねじり込み塞ぐ。それを種子島の刀鍛冶「八坂金兵衛」は娘を差し出して知る。1543年種子島鉄砲伝来の物語である。
 しかしビスの類は後の時代の特例をのぞいて殆ど使われることがなかった。今なら当然ネジで止めるであろう個所も、テーパーの付いた目釘様のもので差し込み止めている。釘はあっても木ねじやビスはなかったのだ。
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 仕事を始める前にノギスで図って詳細な図面を作った。でもそれは自分への説明用。相手が機械加工されているわけではないから、その通り作っても果たして合うかどうか保証の限りでない。少しづつ寸法を合わせながら加工するしかない。
 小さなクサビの溝を切るのが難問だった。が結局これも二つの部品をロー付けして完成させた。今度は上手くいった。
 基本的な形が出来上がったらヤスリで調整しては組み、組んでは外し、またヤスリをかけてと繰り返しては何とかそれらしくしていく。
 クサビが機能するようになったら、次に外見を整え磨きをかけて完成させる。なぜかこの部品はみな竹の節のような形をしていて、如何にも日本的な造形美を見せている。
 その優雅な曲線を引き出すのが実は一番難しい。ヤスリで形を整えサンドペーパーをかけ、最後はバフをかける。自分としては納得出来る代物ではないが、とりあえずそれらしければいい。造形美にはほど遠いが。d0013739_8483821.jpg
 秋にはこの筒の出番がまたある。
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by natsuman | 2012-05-02 09:09 | 射撃砲術 | Trackback | Comments(2)  

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Commented by 半谷 at 2012-05-04 06:41 x
私も以前に挑戦したことがありますが、途中で挫折してM銃砲店でお願いしてしまいました。
Commented by natsuman at 2012-05-04 08:12
簡単なようでいて案外難しいところもあります。今回、機能的にはしっかり出来ましたが、やはり見栄えが今一つかも知れません。回を重ねればもっと巧く行くようになるかも知れません。

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