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分かりにくい事件   1月31日

 世の中には分かりにくい事件というのがある。外務省背任事件がその一つだ。
 これは外務省元主任分析官の佐藤優被告が、偽計業務妨害の罪で1審・東京地裁判決(05年2月)を支持し、被告側の控訴を棄却することとなったもの。要は、国際学会への派遣費用などを外務省関連団体「支援委員会」(廃止)に不正支出させた背任と、国後島の発電施設工事の入札を巡る偽計業務妨害の罪に問われたのだが、これが分かりにくい。分かりにくい事件   1月31日_d0013739_21295266.jpg
 この人、国家秘密に携わった情報のプロで、ロシアの専門家として外務省のラスプーチンなどとあだ名され国際的に名が轟いている。しかも、何やらうさんくささで有名になった鈴木宗男議員とも濃い繋がりがあり、被告が罪に問われた陰には、公表できないロシアとの北方領土に拘わる外交秘密が隠されているように思える。事実、被告は外交秘密が表に出ないように強く希望し、国策にこだわっている。
 被告は02年5月に逮捕されて以来512日間の東京拘置所での獄中生活を既に送り、「国家の罠」、「獄中記」、「インテリジェンス、武器なき戦争」など多数の著書を著し、今や言論界のスターである。外交官としての経験と該博な知識を生かし、新聞・雑誌などに外交評論を多数執筆していて、まやかしの人物にはとても思えない。しかも外務省の役人、元ロシア大使館員である。それが何故背任でと思うのが素人の素直な疑問だろう。
 著書は沢山ある。各種の賞にも輝いている。中で一番手近な「インテリジェンス・武器なき戦争」は暮れに読んだ。元NHKワシントン支局にいた手嶋隆一氏との対談集で、その世界の茫漠とした奥深さ大きさにボクも驚きかつ興味を覚えたのだが、それだけに佐藤優という人物に畏敬の念さへ感じたのも正直なところである。
 書店に出向く度に、さらなる話題の書を手に取り、買おうかどうしようかといつも逡巡するが、あまりに難しい世界の話しすぎて財布の方が顔を出さない。
 今回の高裁の判決が、一言で言えばよく分からない裏の事情を無視した、表面だけの事情を元に判断した結果とも伺われて、リスクを負って仕事をした人が、国策調査の対象となり失脚するようでは、人はみな自己保身に走ることになる、それでは国益が損なわれるという、被告の思いには共感するが、でもどうなるか、何が本当か、難しい。

by natsuman | 2007-01-31 20:34 | 時事世論 | Trackback | Comments(0)  

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