ガット船         7月12日

 ガット船とは何か、ボクの船舶知識ではそうい船はない。だが巷間では皆さんがそう呼ぶ。船の分類からすると土砂運搬船となるが、往年のその手の船とは大分イメージが違う。おおよそ1000トン未満、殆どの船は数百トン級。タイプからすると船尾近くにエンジンのある船尾機関船で、外見上の特徴としては船首デッキに箱形の操縦室を持つクレーンがある。
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 このクレーン、陸上で活躍するキャタピラー付の重機を、そのままデッキに固定したような装備である。その動力はディーゼルエンジン。あの箱の中にそれがある。
 普通、船ならば主機関とは別に補助動力用として発電機関を設備し、その電力でもって甲板機械を駆動するか、あるいは油圧装置を介してというのが本来のやり方だが、ガット船は何故か内燃機関内蔵のクレーンである。陸上の商用機械をそのまま舶載して利用している例である。その方が何かと安上がりなのだろう。
 港にゆけば、ディーゼル排気音も高く、槍を振るようにクレーンを振り回して土砂を積み降ろしているから直ぐに分かる。どうやらあのエンジン付のクレーンの装備をガットと言うらしい。となるとあのグラブを上手く振り回すことがガット船のクレーン士の腕の見せ所というわけだ。しかし、ときに振り回しすぎて船体が左右に大きくローリング、見ていて思わずはらはらすることもある。それが高じて港内で沈没なんて事もあかってはあったらしい。
 東京湾にはこの手のガット船が随分沢山ある。木更津港はそのたまり場だ。もちろん木更津港は商港であり、同様に館山港も地方港湾であってつまり商港である。だがその館山港の主要な利用船舶はこのガット船で主要な荷は土砂である。これでは刊行を目指す港湾都市が泣けますねー。

 かっては東京の地下鉄工事や京浜地区の埋め立て工事やらで、千葉県の山砂がたっぷり運び出された。房総半島は地質的に海底から隆起した沖積層が主体で凡そ堅い岩石というものがない。つまり大方は掘れば皆砂である。そこに目を付けられて至る所に砂取り場がある。大方は人目に付かない山間にあり、住民もよほどの関心を持たなければ、山中に広大な開削された荒々しい現場が多数存在することさえ気がつかない。こうして知らないうちに房総砂漠が出現する。
 しかし山砂が都会にとって必要不可欠な資材として扱われている内はまだ良かった。今ガット船の荷は砂の積み出しではなく都会からの土の搬入である。かってはダンプが山から港へ砂を運んでいたものが、今は港から山へと土を運んでいる。天然無垢の汚れのない砂をかっさらっていって、逆に今は都会で掘り出される土を運び入れている。
 今や砂取り場は都会が絞り出すよく分からない土の捨て場となって、掘り尽くした穴を再び埋め戻している。ところによっては既に巨大な段々式ピラミッドが出現して異様を放っている。これをいつまでも放って置いていいのだろうか。
 国道のある場所に砂取り業者が建てたたのか、国土を開発する、と胸を張った看板が今も立っている。えーっ素性の分からない得体の知れない、もしかした汚染されているかも知れない、外へ持って行きようがない土を、この純粋無垢なる台地に積み立てる事が、開発に連なる事柄かと看板を見る度に腹が立つ。
 でもこれが房州の主産業らしいというところに気がつけば、さらに腹が立つ。あれで儲かるのはダンプに軽油を売るガソリンスタンドくらいだろう。市民はまき散らされる土埃にうんざりしているのだが。もう館山港が砂積み船で賑わうなんて図式は勘弁願いたい。観光地にダンプカーは似合わない。
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by natsuman | 2006-07-12 20:56 | 自然環境 | Trackback | Comments(1)  

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