寒くなったら温泉に限る。それも白い濁り湯が好い。
小さな宿のこの小さなお風呂。透き通った感がある。
がこれも濁り湯。いやこれこそ濁り湯の本命。
まだ誰も入っていない。硫黄系の湯花は底に沈殿。れっきとした奥日光湯元温泉。
源泉から一筋の熱い湯が四六時中流れ込む。もちろん掛け流し。
良く見ると表面にキラキラと雲母状の薄片が浮いている。そう見える。
それを温泉に慣れないお客さんが言う。
「浴槽に垢がいっぱい浮かんでた。不潔だ」と。お宿の係がそうこぼす。
「オーそれはないねー。残念ながらそんなお客さんって案外多いんだよね」とボク。
知らないとはいえ宿にしてみれば不愉快ではある。
何せ今どきは、ろくに温泉の歴史がないにもかかわらず掘削してポンプで汲んで、
これのどこが温泉かと思わせるような沸かし湯温泉がある。温泉の看板必ずしも温泉宿に非ずだ。
湯花が舞っているような湯が本当の自噴温泉というのに。そんな湯がまた恋しい。